福岡県建築都市部建築指導課長
水 田 健 二

 我が国は、21世紀に入って、国際化や情報化が加速するとともに、健康や環境への国民的関心も高まり、成長型社会から成熟型社会へと本格的に移行する時代を迎えております。国民生活や経済活動の場としての建築物についても、国民の要望が多様化、高度化してきている中で、社会生活の変化や社会の要請を踏まえた新たな時代に対応した建築行政を確立することが急務となっています。
このような社会的な要請を背景として、平成14年に建築基準法及び都市計画法の一部が改正され、またそれらと関連する法律の制定または改正が行われました。
福岡県におきましても、これらの法改正等に対応して、積極的に建築行政に取り組んでいるところであり、建築士の皆様にも、講習会等の機会を通じましてご協力を頂いているところですが、改めて、それらの法改正等の動向について以下に述べさせていただきたいと思います。

(1) シックハウス対策の導入
今回の法改正で建築基準法に第28条の2が新設され、平成15年7月1日から施行されたところです。これにより、居室を有するすべての建築物に対してシックハウス対策が義務付けられました。規制の主な概要は以下のとおりです。

@ クロルピリホスの使用禁止
 しろあり駆除剤等に使われてきたクロルピリホスの建築物への使用が禁止されました。

A ホルムアルデヒドを含む建築材料の使用制限
 合板、木質系フローリング、集成材などのうち、国土交通省告示で列記されたホルムアルデヒド発散建築材料を居室の内装仕上げに用いる場合は、その使用できる面積が制限されます。告示では、ホルムアルデヒドの発散が多い順に第1種から第3種まで分類されています。
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料は、内装仕上げには原則として使用できません。第2種ホルムアルデヒド発散建築材料(JIS、JAS規格でF☆☆と表示されたもの)及び第3種ホルムアルデヒド発散建築材料(同規格でF☆☆☆と表示されたもの)は、居室の床面積に応じて使用できる面積が制限されます。
なお、ホルムアルデヒドの発散が少ないもの(同規格のF☆☆☆☆で表示されたもの)やホルムアルデヒドを含まない木材、コンクリート等の建築材料は制限なく使用することができるほか、告示に掲げられた建築材料でも、建築物に使用されてから5年以上経過したものは規制対象外となります。

B 居室への機械換気設備の設置の義務付け
 居室には、内装仕上げにホルムアルデヒド発散建築材料を使用するしないにかかわらず、原則として、機械換気設備の設置が義務付けられました。住宅の居室にあっては1時間あたり0.5回以上、その他の居室にあっては0.3回以上の換気回数が要求され、機械換気設備による居室の有効換気回数が、それらを上回るように設計する必要があります。
また、複数の居室をまとめて1つの設備で換気することもできますが、その場合は換気経路を明確にして換気計算をする必要があります。
なお、機械換気設備の設計に当たっては、使用者が、例えば24時間継続して運転しようとしても、気流、温度、騒音等により不快感を感じ、容易に換気設備のスイッチを切ってしまうことがないように配慮する必要があります。

C 天井裏等の措置
天井裏等(小屋裏、天井裏、床下、換気経路とならない押入等)に第1種又は第2種ホルムアルデヒド発散建築材料を使用する場合は、原則として、居室と天井裏等を気密層もしくは通気止めによって区画するかまたは天井裏等を直接機械換気することによって、居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐ必要があります。
なお、天井裏等には第3種ホルムアルデヒド発散建築材料は制限なく使用でき、居室との区画または天井裏等の換気措置が不要となります。

(2) 高さ制限に係る天空率の導入

 今回の改正で第56条第7項が創設され、平成15年1月1日から施行されました。
同条による建築物の高さ制限としては、道路斜線制限、隣地斜線制限及び北側斜線制限がありますが、これに新たに天空率という概念が加わったことにより、これらの斜線制限と同程度の採光等を確保する建築物には、斜線制限を適用しないことができるようになりました。
 天空率とは、一言でいうと地上のある点から天空を見上げたときに、建築物などの障害物を除いた実際に見える天空の面積の割合のことです。
 実務上は、例えば、道路斜線制限に適合する任意に想定した建築物(道路高さ制限適合建築物)と実際の計画建築物について、道路の反対側の境界線上における天空率を比較し、計画建築物の天空率が道路高さ制限適合建築物の天空率よりも大きければ、道路斜線制限に適合していなくても建築できるというものです。
 なお、斜線制限によって設計するか、天空率によって設計するかは任意に選択することができます。

(3) その他

@ 容積率制限を迅速に緩和する制度等の導入
 
今回の改正では、第1種住居地域など混在型の用途地域において、住宅系建築物の容積率制限については、許可を経ずに建築確認の手続きで迅速に緩和できる制度(法第52条第7項)が創設され、平成15年1月1日から施行されました。
 しかしながら、一律に緩和可能とすると、日影のトラブルや交通混雑などにより良好な市街地を形成する上で支障となる地域もあることが懸念されます。このため、過去の許可実績や許可による緩和も可能である実態等を踏まえ、さらに市町村の意見を聞いた上で、福岡県としては、当面はこれまでの規制を継続して運用することとし、特定行政庁として全域適用除外の指定を行ったところです。
従って、容積率の緩和を受ける際には、これまでどおり許可制度を活用していただきますようお願いいたします。
 なお、このほかに、道路・隣地斜線制限の勾配等の数値や日影測定面の高さの数値についても選択肢が拡充されましたが、良好な市街地環境の維持を図るため、福岡県としては、これらについても当面は、これまでの数値により引き続き運用することとしています。

A 用途地域における容積率、建ぺい率等の選択肢の拡充
    用途地域における指定容積率及び指定建ぺい率の数値の選択肢が拡充されたとともに、低層住居専用地域以外の用途地域においても最低敷地面積の制限が可能となりました。これらは市町村の都市計画で定めることになっています。

 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が平成14年に一部改正され、平成15年4月1日から施行されました。その主な概要は以下のとおりです。

(1) 特定建築物の範囲の拡大
 特定建築物(デパート、劇場、ホテル等の不特定多数の者が利用する建築物)に、不特定多数でなくとも多数の者が利用する学校、事務所、共同住宅等が加えられ、これらについても、バリアフリー対応に係る利用円滑化基準(最低基準)に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととなりました。

(2) 特別特定建築物の建築等について利用円滑化基準への適合義務の創出
 
これまでの特定建築物に、老人ホーム等の主として高齢者・障害者等が利用する建築物が加わり、新たに特別特定建築物として位置付けられ、特別特定建築物について、2,000F以上の新築・増改築等をする場合は、利用円滑化基準への適合が義務付けられました。
 この規定は建築基準関係規定とみなされますので、上記に該当する建築物については、確認申請書にバリアフリー対応に係る図面等も添付し、建築主事または指定確認検査機関の審査を受ける必要があります。

(3) 認定建築物に対する支援措置の拡大
 所管行政庁からバリアフリー対応に係る利用円滑化誘導基準(望ましい基準)に適合するとの認定を受けた特定建築物(認定建築物)について、容積率の緩和が可能となりました。算定の基礎となる延べ面積には、廊下、階段、エレベーターなどの特定施設の床面積のうち、通常の建築物の特定施設の床面積を超えることとなる一定の床面積を算入しないことができるようになりました。
 なお、認定建築物については、そのほかに建築基準法の手続きの簡素化や予算・税制上の助成措置等も引き続き適用されます。

 「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(いわゆる省エネルギー法)の一部が平成14年に改正され、平成15年4月1日から施行されました。
 この法律では、床面積が2,000F以上の建築物(住宅を除くすべての用途)を特定建築物と位置付け、これまでは、国土交通省の地方整備局が、同省の定める省エネルギー基準に適合するよう、必要に応じて指導及び助言を行ってきました。
 今回の法改正では、指導及び助言に関する権限が国から所管行政庁(都道府県、建築主事を置く市町村等)に委譲され、さらに、特定建築物の新築・増改築をする時は、事前に所管行政庁への「省エネルギー措置の届出」を行うことが義務付けられました。

 以上、建築をとりまく法改正の動向について概説しましたが、近年の度重なる法改正により、建築士の業務が複雑化・多様化してきていることは、社会における建築士等の専門技術者の役割が一層重要になっていることの現れであろうと思われます。
 また、地震等に対する安全性はもとより、シックハウス対策等、建築物の健康面についての安全性の確保についても社会的な要求が高まってきていることから、的確な工事監理を実施し、建築物の品質確保の実効性を上げていくことが、今後ますます重要になってきていると思われます。
 以上のことを念頭に置いていただき、今後とも建築知識の習得に励まれ、時代の要請に的確に応えていかれることを期待いたします。