福岡県建築士会会長
田村 弘

会員の皆さん新年明けまして御目出度う御座います。旧年中は会の運営にご協力賜り有り難う御座いました。新たな気持ちで新春を迎えられたこととお慶び申し上げます。「光陰矢の如し」とは昔から言われた格言ですが、いまや現代はそれ以上の速度で過ぎ去って行くような感が致します。これも時代環境の然らしめるものだと思います。また「時は金なり」とも言われ、「時(とき)」という字句は我々人間生活に関わりの深いものとして実に使い方がたくさんありまして、この時間と言うものが如何にに大切かと言うことがわかります。
 建築士ができて半世紀余が過ぎ去りました。時代の経過、変遷は如何ともし難い史実として残されていきます。建築法規の改正、建築技術の革新、専門技術の分化、等も総て時間の経過とともに形成され今日に至っているもので、また時代の消長も時の流れに逆らう事は出来ません。
 最近能力開発(CPD)や専攻建築士制度が叫ばれていますが、これらも時代的な社会ニーズで起こるべくして起こったものと思います。この能力開発(CPD)制度とは、かなり難しい表現ですが分かり易い日本語でいえば「継続して勉強しなさい」と言うことに過ぎません。我が国の建築士法は国際的にも他国に類を見ない立派な制度と言われておりますが、長い年月、建築士は今まで何をして来たのかと言うことになりますと多少疑問があります。それは建築士と言うものの職域を社会的によく理解されず、建築士であれば何でもできると言うような誤った固定概念を持たれ、または建築士法の番人的存在のように見られるのも何か寂しい気がします。
 それでは今まで建築士はいったい何をしてきたのであろうか、戦後の荒廃から国土復興に、そして新しい街づくりに献身し、その先鋒に立ってきたのは建築士であり、建築士の存在はそれなりに評価されるべきであります。ただ建築士法で過保護に護られてきた過去から現在にいたる独占業務の建築設計、工事監理とその他の業務について、他の業界に比べ社会的な啓蒙、宣伝等が閉鎖的で、また法の指導と運用(的確な建築士有資格者数がつかめない)の面で問題がなかったかと言えば、そこには研修制度、登録更新制度等の不備があったのではないかと思われます。そのように考えると、この50余年間は勿体ない時間の空白のような気が致します。
 何の資格者であれ、それなりの能力と資質を備えてこそ、社会に自己の資格を開示して信頼を得る事が出来ると思います。ペーパードライバーの運転する車には、危険で誰しも乗りたくないのと同様に技術、能力、資質の無い建築士は社会から敬遠され、信頼されないのではないでしょうか。
 今頃になって継続能力開発(CPD)とか専攻建築士制度はむしろ遅きに失した感がありますが、この制度について本会でも昨年の暮れに「CPD説明会」で説明したとおり、現在この制度創設のため「CPD等特別委員会」を組織し、既に発足しており学識経験者、各界の有識者で「CPDプログラム評議会」をつくり、1月から運営を始める事にしております。とにかく過ぎ去って行く貴重な時間を有効に使って、この制度を機に若い新進気鋭の建築士の入会を勧誘して戴き、会員増強を期待するものであります。今年は本会あげて専ら継続能力開発(CPD)制度啓蒙促進の年になりそうです。どうか会員各位の本会運営に格別のご協力を心からお願い申し上げます。